今日のニュース 深堀り 食料品の消費税が8%から1%へ?
年金生活者の家計はいくら助かる? 牛丼から考える「外食10%・持ち帰り1%」の問題

2026年9月9日
スーパーへ買い物に行くたびに、
「また高くなったな」
と感じることが増えていないでしょうか。
米、パン、肉、魚、野菜、調味料、乳製品、冷凍食品……。
一つ一つの値上げは数十円でも、毎日のことですから、1か月、1年と積み重なると大きな負担になります。
特に年金生活では、物価が上がったからといって収入がすぐ同じだけ増えるわけではありません。
そんな中、私たちの食生活に直接関係する大きな動きが出ています。
政府が9月8日に示した大綱案では、
2027年4月1日から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品の消費税率を1%に引き下げる
という案が示されています。
8%が5%になるのではありません。
8%から1%です。
もし実現すれば、スーパーで毎日買い物をする年金生活者にとって大きな負担軽減になります。
ところが、この制度をよく調べてみると、別の問題も見えてきます。
例えば牛丼です。
同じ牛丼でも、
店の中で食べれば10%。
持ち帰れば1%。
現在の制度区分が維持されれば、このような大きな税率差が生まれることになります。
これは私たちの食生活を変えてしまうかもしれません。
今回は、
食料品1%で年金生活者はいくら助かるのか。
そして、
外食10%・持ち帰り1%になれば、日本人の外食はどうなるのか。
「今日のニュース 深堀り」として考えてみたいと思います。
まず確認
「2027年4月から1%」はまだ正式決定ではない
ここは大切なので、最初に確認しておきます。
今回示されているのは、
「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(案)」
です。
この記事を書いている2026年9月9日時点では、法律が成立して実施が確定したわけではありません。
今後の政府・国会での議論によって、制度の内容が変更される可能性もあります。
したがって、
「来年から食料品の消費税が1%になることが決まった」
という段階ではありません。
現時点では、
「政府が具体的な案を示した」
と理解するのが正確でしょう。
現在、食料品の消費税は8%
現在の消費税率は原則10%です。
ただし、酒類や外食を除く一定の飲食料品には軽減税率が適用され、
8%
となっています。
例えばスーパーで購入する、
米
肉
魚
野菜
パン
牛乳
調味料
お菓子
飲料
などです。
今回の案では、こうした現在8%になっている飲食料品を、
8% → 1%
へ引き下げます。
実施期間として示されているのは、
2027年4月1日から2年間。
恒久的な減税ではなく、物価高に対応するための時限的な措置です。
8%から1%になると、どれくらい安くなる?
まず税抜き1,000円の食品で考えてみましょう。
現在8%なら、
消費税80円。
支払額は、
1,080円
です。
1%なら、
消費税10円。
支払額は、
1,010円
です。
差額は、
70円。
1回の買い物では小さく感じます。
しかし毎月何万円も食料品を購入する年金生活者では、年間で考えると大きな金額になります。
食費月3万円・5万円・7万円なら?
すべて軽減税率対象の飲食料品を税抜き価格で購入すると仮定して、単純計算してみます。
月3万円の場合
現在8%なら税額は月2,400円。
1%なら300円。
月2,100円の負担減。
年間では、
2万5,200円。
2年間なら、
5万400円
です。
月5万円の場合
現在8%なら月4,000円。
1%なら500円。
月3,500円の負担減。
年間、
4万2,000円。
2年間なら、
8万4,000円
です。
月7万円の場合
現在8%なら月5,600円。
1%なら700円。
月4,900円の負担減。
年間、
5万8,800円。
2年間なら、
11万7,600円
です。
年金生活者にとって、決して小さな金額ではありません。
ところが「牛丼」で考えると、おかしなことが起こる
ここからが今回の記事で最も考えてみたいところです。
例えば牛丼店へ行ったとします。
現在でも同じ牛丼を購入して、
店内で食べる → 消費税10%
持ち帰る → 消費税8%
となります。
外食は軽減税率の対象外ですが、持ち帰りは飲食料品の購入として軽減税率の対象になるからです。
では、食料品の税率が1%になったらどうなるでしょうか。
現在の制度区分がそのまま維持されれば、
店内で食べる → 10%
持ち帰る → 1%
です。
なんと、
税率差は9ポイント。
現在の2ポイントから、一気に9ポイントまで広がります。
同じ牛丼なのに「どこで食べるか」で税金が違う
考えてみると不思議です。
同じ店。
同じ厨房。
同じ牛丼。
それなのに、
店の椅子に座って食べれば10%。
家へ持って帰れば1%。
現在の消費税制度では、店内飲食は「外食」、テイクアウトは「飲食料品の譲渡」と区分されるためです。
これは牛丼だけの問題ではありません。
ハンバーガーでも、
店内10%・持ち帰り1%。
コンビニやスーパーの弁当も持ち帰れば1%となる一方、一定の飲食設備を利用して食べる場合は外食として10%になります。
つまり、
「何を食べるか」ではなく「どこで食べるか」で9ポイントもの差
が生まれる可能性があります。
1,000円の食事なら90円違う
税抜き1,000円で単純計算してみます。
店内飲食10%なら、
1,100円。
持ち帰り1%なら、
1,010円。
差額は、
90円
です。
夫婦二人なら180円。
4人家族なら360円。
これを何度も繰り返せば、かなり違ってきます。
物価高で節約を意識している家庭なら、
「同じものなら持ち帰って家で食べよう」
と考えても不思議ではありません。
年金生活者ほど「外食をやめて持ち帰ろう」とならないか
70代の生活で考えてみましょう。
例えば昼食に、
牛丼
うどん
ハンバーガー
寿司
弁当
などを利用するとします。
現在は店内10%と持ち帰り8%ですから、差は2ポイントです。
ところが、
店内10%
持ち帰り1%
になれば、印象はかなり変わります。
「今日は家へ持って帰ろう」
「外食は月4回から2回にしよう」
「スーパーで総菜を買った方が安い」
という行動が増える可能性があります。
つまり今回の減税には、
家計を助ける効果
と同時に、
外食を減らす方向へ消費者を動かす可能性
があります。
「外食離れ」は政府でも問題になっている
これは単なる想像ではありません。
政府の検討過程でも、
内食と外食の税負担の差が拡大することで、外食の売上げに影響を及ぼす可能性
が論点になっています。
国会でも、現在の10%対8%という2ポイント差が、
10%対1%の9ポイント差
へ広がることによる外食産業への影響が議論されています。
食料品を安くする政策が、
「外食より持ち帰り」
という新しい消費行動を生み出す可能性があるわけです。
スーパーやコンビニの「中食」が増える?
ここで注目したいのが、
「中食(なかしょく)」
です。
中食とは、外で調理された食品を購入し、自宅などで食べることです。
例えば、
スーパーの弁当
総菜
寿司
揚げ物
サラダ
コンビニのおにぎり
などです。
食料品1%が実現すれば、
自宅で料理する「内食」
と、
買って帰る「中食」
には1%。
一方、
店で食べる「外食」
には10%。
そうなれば、
外食 → 中食
という流れが強まる可能性があります。
スーパーやコンビニには追い風になるかもしれません。
反対に、レストラン、食堂、喫茶店などには厳しい状況になる可能性があります。
小さな飲食店への影響も心配
外食産業はすでに、
食材費
人件費
電気・ガス代
などの上昇に直面しています。
そこへ、
「持ち帰れば1%、店で食べれば10%」
という税率差が加わったらどうなるでしょうか。
大手チェーンならテイクアウトを強化できます。
しかし地域の小さな食堂や喫茶店では、簡単ではありません。
高齢者がよく利用する地域の飲食店が、
「客が減って営業を続けられない」
となる可能性も考えておかなければなりません。
高齢者にとって外食は「ぜいたく」だけではない
私はここが70代にとって非常に重要だと思います。
外食というと、
「ぜいたく」
というイメージがあります。
しかし高齢者にとっては、それだけではありません。
友人と喫茶店へ行く。
老人会の仲間と昼食を食べる。
夫婦でたまには外へ食べに行く。
一人暮らしの人が食堂へ出掛ける。
そこには、
人と会う。
会話する。
歩く。
外へ出る。
社会とつながる。
という意味があります。
高齢者にとって外出や社会参加の機会を保つことは、健康やフレイル予防を考えるうえでも大切です。
「税金が9%違うから外食をやめよう」
という人が増えれば、単なる食費の問題だけでは済まないかもしれません。
それなら外食も1%にすればいい?
当然、そう考える人もいるでしょう。
政府の検討でも、外食について税率引下げを検討すべきだという意見があります。
しかし、外食まで対象を広げれば、減税額はさらに大きくなります。
そうなると必ず出てくるのが、
「財源をどうするのか」
という問題です。
今回の食料品減税と所得連動型の給付には、大きな財源が必要になります。
減税によって家計が助かっても、別の税金や社会保険料などの負担が増えれば意味が薄れてしまいます。
ここは今後の議論を注意して見ていく必要があります。
年金生活者への「給付」はどうなる?
政府は食料品の税率引下げとは別に、
所得に連動した給付制度
も検討しています。
ただし、現時点の案では先行する給付は中低所得の現役勤労者が中心となっています。
したがって、
「年金生活者なら1%への減税に加えて現金給付も必ず受け取れる」
と考えるのはまだ早いでしょう。
年金生活者が対象になるのか。
所得条件はいくらになるのか。
申請は必要なのか。
今後の制度設計を確認する必要があります。
公金受取口座ともつながる
このブログでは先日、
「年金受給者に届く『大切なお知らせ』」
について取り上げました。
公金受取口座を登録しておけば、対象となる給付金などを受け取る際の口座情報確認を簡単にできます。
今後、所得に応じた給付制度が拡大すれば、こうしたデジタルの仕組みがさらに重要になるでしょう。
つまり、
食料品の消費税減税
所得に応じた給付
公金受取口座
は、別々のニュースのように見えて実はつながっています。
70代の私たちはどうすればいい?
食料品の消費税が1%になれば、年金生活者の家計にとっては大きな助けになる可能性があります。
だからといって、
「外食は税金が高いから全部やめよう」
と考える必要はないと思います。
70代では、
お金を節約すること
も大切です。
しかし、
友人と会うこと。
夫婦で食事を楽しむこと。
地域の人と交流すること。
外へ歩いて出掛けること。
こうした時間も大切です。
例えば、
普段の食事はスーパーや自炊で節約する。
その代わり、
月に何回かは友人や家族との外食を楽しむ。
そんな使い分けも一つの方法ではないでしょうか。
まとめ
牛丼一杯から見えてくる「消費税1%」の難しさ
食料品の消費税が、
8% → 1%
になれば、年金生活者にとって大きな負担軽減になります。
税抜き月5万円の対象食品を購入すると仮定すれば、単純計算で、
月3,500円。
年間4万2,000円。
2年間で8万4,000円。
税負担が軽くなります。
これはありがたいことです。
しかし牛丼一杯で考えると、別の景色が見えてきます。
店内で食べる牛丼 → 10%。
持ち帰る牛丼 → 1%。
同じ牛丼なのに、
税率差9ポイント。
そうなれば、
「持ち帰って家で食べよう」
という人が増える可能性があります。
その結果、
外食が減る。
スーパーやコンビニの中食が増える。
地域の飲食店が厳しくなる。
高齢者の外出や交流の機会まで減るかもしれない。
食料品1%という政策は、
単にスーパーのレジで支払う金額だけの問題ではない
のです。
私たちが、
どこで買うのか。
どこで食べるのか。
誰と食べるのか。
そこまで変える可能性があります。
しかも、2026年9月9日時点ではまだ正式決定ではありません。
今後は、
本当に2027年4月から実施されるのか。
外食10%と持ち帰り1%という9ポイント差をどうするのか。
外食産業への対策は行われるのか。
年金生活者への新しい給付はあるのか。
そして、
2年間の減税が終わった後はどうなるのか。
ここまで追いかけていきたいと思います。
「食料品が安くなる。よかった。」
だけでは終わらせない。
その政策によって、私たちの生活がどう変わるのか。
そこまで考えるのが「今日のニュース 深堀り」ではないでしょうか。
なお、現在の軽減税率制度で**牛丼店の店内飲食は10%、テイクアウトは8%**という扱いは財務省の公式資料でも示されています。(財務省・消費税の軽減税率制度)
また政府の検討資料でも、飲食料品の税率を大幅に下げた場合、内食と外食の税負担差の拡大が外食の売上げに影響する可能性が課題として挙げられています。(政府検討資料)
