今日のニュース 深堀り 生活保護世帯の半数以上が高齢者
年金だけで暮らせない時代が来ているのか?

2026年9月6日
「老後は年金で暮らす」
長い間、日本ではこれが老後生活の基本的な考え方でした。
しかし今、その前提について改めて考えさせられる数字が発表されています。
厚生労働省が2026年9月2日に公表した「被保護者調査(2026年6月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯のうち、55.3%が高齢者世帯でした。
つまり、生活保護世帯の半数以上を高齢者世帯が占めています。
さらに注目したいのは、その多くが一人暮らしだということです。
今回は、
なぜ高齢者の生活保護がこれほど多いのか。
年金だけでは暮らせない時代になっているのか。
そして、私たちは今から何を考えておくべきなのか。
「今日のニュース 深堀り」として考えてみたいと思います。
生活保護世帯の55.3%が高齢者
最新の2026年6月分の調査では、生活保護を受けている人は約197万人です。
そして生活保護世帯を世帯の種類別に見ると、高齢者世帯は約90万世帯で、全体の**55.3%**を占めています。
さらに、一人暮らしの高齢者だけで全体の**51.7%**を占めます。
つまり、生活保護を受けている世帯のおよそ2世帯に1世帯が「一人暮らしの高齢者」という状況なのです。
これは非常に重い数字だと思います。
ただし、「最近になって急に高齢者の生活保護が増えた」と単純に考えるのは正確ではありません。
2024年度の確定値でも、高齢者世帯は生活保護世帯の55.2%を占めていました。
生活保護世帯の高齢化は、すでに日本社会の構造的な問題になっているのです。
なぜ高齢者がこれほど多いのでしょうか
大きな理由の一つとして考えられるのが、老後になると収入を増やすことが難しいことです。
現役世代なら、生活が苦しくなれば転職する、勤務時間を増やす、副業をするといった方法があります。
しかし70代、80代になれば同じようにはいきません。
多くの人にとって収入の中心は年金になります。
そして年金額が少なければ、その後何年、何十年と生活しても収入を大きく増やすことは簡単ではありません。
一方で、
食料品、電気・ガス、家賃、医療費、介護費、住宅の修繕費など、生活に必要なお金はなくなりません。
むしろ年齢を重ねるほど、医療や介護など新しい支出が出てくる可能性があります。
「年金をもらっている=生活保護を受けられない」ではありません
ここは誤解されやすいところです。
年金を受給していても、条件を満たせば生活保護を受けることはできます。
生活保護は、
最低生活費 − 世帯の収入 = 保護費
という考え方が基本です。
例えば年金などの収入があっても、その世帯について算定された最低生活費に届かなければ、不足する部分が生活保護で補われる仕組みです。
もちろん、「年金が少ないから誰でも生活保護を受けられる」という意味ではありません。
利用できる資産や能力、年金・手当など他制度の活用などを確認したうえで判断されます。
「生活保護の方が年金より多い」は少し違う
よく、
「一生懸命働いて年金を払ってきたのに、生活保護の方がたくさんもらえるのはおかしい」
という話を耳にします。
しかし、年金と生活保護はそもそも目的が違います。
年金は、現役時代に加入してきた公的年金制度から老後などに給付を受ける仕組みです。
一方、生活保護は生活に困窮したときに最低限度の生活を保障する最後のセーフティネットです。
したがって単純に、
「年金○万円」と「生活保護○万円」
だけを比較することはできません。
住んでいる地域、家賃、世帯人数、収入などによって必要とされる最低生活費が違うからです。
本当に「年金だけでは暮らせない時代」になったのでしょうか
私は、ここは少し慎重に考える必要があると思います。
今回の数字だけを見て、
「高齢者の半数以上が生活保護を受けている」
と考えてはいけません。
55.3%という数字は、生活保護を受けている世帯の中で高齢者世帯が占める割合です。
日本の高齢者世帯全体の55.3%が生活保護を受けているわけではありません。
ここは非常に重要な違いです。
一方で、生活保護世帯の過半数を高齢者世帯が占め、その大半が単身世帯であることも事実です。
したがって問題は、
「年金だけで暮らせるか、暮らせないか」
という二者択一ではありません。
老後の生活は、
年金額+住居費+貯蓄+健康状態+家族構成
によって大きく変わるのだと思います。
特に大きいのは「住まい」ではないでしょうか
同じ月10万円の年金でも、
住宅ローンを完済した持ち家で暮らす人と、毎月5万円の家賃を払う人では生活の余裕が大きく違います。
70歳を過ぎてから毎月5万円の家賃を払い続ければ、
年間60万円。
10年間なら600万円です。
さらに一人暮らしになると、電気代、冷蔵庫、テレビ、通信費などを一人で負担しなければなりません。
夫婦二人なら共有できた生活費を、一人ですべて負担することになります。
最新統計で生活保護世帯の半数以上が高齢単身世帯であることは、こうした「一人暮らしの老後」の問題について考えるきっかけになります。
70代の私たちは、今から何を準備すればいいのか
今回のニュースを「生活保護が増えている」という話だけで終わらせてはいけないと思います。
大切なのは、自分自身の老後に置き換えて考えることです。
① 自分の「最低生活費」を知っておく
毎月いくらあれば最低限暮らせるのか。
食費、光熱費、通信費、税金、社会保険料、医療費、車、住宅費などを書き出してみる。
これだけでも老後の不安はかなり具体化できます。
② 年金だけで足りるか確認する
毎月の年金手取り額と生活費を比較します。
例えば、
年金手取り15万円
生活費18万円
なら、毎月3万円不足します。
年間36万円。
10年間なら単純計算で360万円です。
「何となく大丈夫だろう」ではなく、一度数字にしてみることが大切です。
③ 一人暮らしになった場合を考える
夫婦で生活している人も、どちらかが先に亡くなれば一人暮らしになる可能性があります。
そのとき、
年金はいくらになるのか。
家を維持できるのか。
車は必要なのか。
買い物や通院はどうするのか。
元気なうちに考えておく必要があります。
④ 貯金だけでなく「毎月の固定費」を減らす
老後では、資産額だけでなく毎月出ていくお金が重要になります。
スマートフォン料金、保険料、車の維持費、使っていないサービスなど、小さな固定費でも10年、20年続けば大きな金額になります。
⑤ 困ったら早めに相談する
生活保護は、恥ずかしい制度ではありません。
生活に困窮した人のために法律に基づいて設けられた制度です。
本当に生活が苦しくなった場合には、住んでいる地域を所管する福祉事務所などに相談できます。厚生労働省も生活保護の相談・申請窓口を福祉事務所と案内しています。
まとめ――問題は「長生き」ではなく「長生きに備えているか」
人生100年時代と言われます。
70歳からでも20年、30年生きる可能性があります。
長生きできること自体は喜ばしいことです。
しかし、長生きすれば、それだけ生活費も必要になります。
今回発表された、
生活保護世帯の55.3%が高齢者世帯。
さらに51.7%が高齢単身世帯。
という数字は、日本の高齢社会の一つの現実を表しています。
だからこそ70代になったら、
「あといくら貯金が必要か」
だけではなく、
「毎月いくらあれば暮らせるのか」
「一人になったらどうするのか」
「80歳、90歳になったとき生活を維持できるのか」
まで考えておくことが大切なのではないでしょうか。
生活保護は最後のセーフティネットです。
しかし、その制度があることを知ったうえで、できるだけ長く自分らしい生活を続けられるよう、元気なうちから家計、住まい、健康、そして人とのつながりを整えておく。
今回のニュースから、そんなことを改めて考えさせられました。
「老後のお金」は、貯金額だけの問題ではない。
これが今回の「今日のニュース 深堀り」で、私が最も考えておきたいポイントです。
