成年後見制度、なぜ「任意後見」をもっと教えないのか?――72歳の私が講習会で感じた疑問

成年後見制度の講習会に参加して感じたこと

2026年10月9日(金)、松山市社会福祉協議会で開催された成年後見制度の講習会に参加しました。

高齢化が進む日本において、認知症などで判断能力が低下した場合に、自分の財産や生活を誰が守ってくれるのか。

これは70代の私にとっても、決して他人事ではありません。

ところが、今回の講習会では、説明の9割以上が「法定後見制度」に関するもので、「任意後見制度」については1割にも満たない程度でした。

もちろん、法定後見制度は重要です。

しかし、私は講習を聞きながら、一つの疑問を感じました。

「なぜ、元気なうちに自分で将来を決められる任意後見制度について、もっと説明しないのだろうか?」

今回は、この疑問について考えてみたいと思います。

1.成年後見制度には2つの仕組みがある

成年後見制度には、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。

比較項目法定後見制度任意後見制度
利用する場面判断能力が不十分になったとき判断能力が十分なうちに契約
後見人の選び方家庭裁判所が選任本人が事前に選ぶ
支援内容法律で定められた範囲と家庭裁判所の審判等による契約で定めた代理権の範囲
利用開始家庭裁判所の審判による判断能力低下後、任意後見監督人の選任による
本人の意思本人の意向も考慮される元気なうちの希望を契約に反映できる

私が注目しているのは、任意後見制度です。

例えば、自分が将来認知症になった場合に備えて、信頼できる長男や長女などに財産管理や生活に必要な契約を任せる準備ができます。

公正証書で契約を結び、実際に判断能力が不十分になった段階で、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見が始まります。

つまり、自分の人生の重要なことを、自分で決められるうちに準備できる制度なのです。

2.なぜ法定後見制度の説明が中心になるのか

社会福祉協議会などの相談窓口には、すでに認知症が進み、財産管理や契約に困っている人の相談が寄せられます。

そのため、実際の支援に直結する法定後見制度の説明が多くなる事情は理解できます。

また、任意後見制度は、契約を結んでも必ず利用が開始されるわけではありません。

本人が元気なまま生活を続ける場合もあれば、判断能力が低下しても開始手続きが行われない場合もあります。

しかし、それは任意後見制度の価値が低いという意味ではないはずです。

私は、成年後見制度の講習会には、現在困っている人を支援する役割だけでなく、将来困らないように高齢者に準備を促す役割もあると考えます。

3.70代の私が任意後見制度に関心を持つ理由

私は現在72歳です。

今は自分で生活し、財産を管理し、さまざまな判断もできます。

しかし、5年後、10年後も同じ状態でいられるとは限りません。

私が大切にしたいのは、次のようなことです。

  • できる限り、住み慣れた松山市の自宅で暮らし続けたい。
  • 将来の財産管理を信頼できる家族に任せたい。
  • 自宅は簡単に売却せず、在宅生活が難しくなり、介護費用などで必要になった場合に限って売却を検討してほしい。
  • 介護や療養についても、自分の希望を尊重してほしい。

こうした希望を、判断能力が十分なうちに家族と話し合い、契約や希望書に残しておくことには大きな意味があります。

ただし、任意後見契約を結べば希望がすべて実現するわけではありません。医療行為への同意など、後見人にはできないこともあります。

だからこそ、制度の仕組みと限界を早くから学ぶ必要があるのです。

4.任意後見制度は、認知症になってからでは遅い

任意後見制度で最も大切なことは、契約内容を理解して判断できるうちに準備することです。

認知症と診断されたら一律に契約できなくなるわけではありませんが、契約を理解する能力が不十分になってしまうと、有効な任意後見契約を結ぶことは難しくなります。

そのため、私は70代の人たちに、次のことを伝えたいと思います。

「認知症になったら成年後見制度を考える」のではなく、「元気な今こそ、任意後見制度を知っておく」ことが大切です。

契約するかどうかは、その後で判断すればよいのです。

5.任意後見制度にも費用と注意点がある

任意後見制度は、決して万能ではありません。

公正証書の作成費用や登記関係の費用が必要です。また、任意後見が開始すると、任意後見監督人が選任され、その報酬が継続的に発生する場合があります。

任意後見人にも、契約内容によって報酬が必要です。

さらに、任意後見契約だけでは、本人が元気なうちの財産管理を当然に任せられるわけではありません。

必要に応じて「財産管理等委任契約」や「見守り契約」などを組み合わせる方法もあります。

契約内容を十分に理解し、公証人や専門家に相談して準備することが重要です。

6.講習会では任意後見制度をもっと取り上げてほしい

今回の講習会を批判したいわけではありません。

法定後見制度の説明も必要ですし、すでに判断能力が低下した人を支援することは、社会にとって重要な役割です。

しかし、元気な高齢者が参加する講習会であれば、任意後見制度についても、もっと時間を割いて説明してほしいと思いました。

例えば、法定後見と任意後見の違いだけでなく、任意後見契約の具体例、費用、家族との話し合い方、契約から開始までの手順などを紹介していただければ、参加者の理解はさらに深まるのではないでしょうか。

法定後見制度が「困ったときの支援」だとすれば、任意後見制度は「困る前の備え」です。

どちらか一方だけでなく、両方を知ったうえで、自分に合った制度を選べることが大切だと思います。

7.70代の皆さんへ――自分の将来を自分で決めませんか

私たち70代は、まだまだ元気です。

旅行を楽しみ、運動を続け、地域活動に参加している人もたくさんいます。

だからこそ、今のうちに将来のことを考えておく価値があります。

誰に財産管理を任せるのか。

どこで暮らし続けたいのか。

介護が必要になったとき、どのような生活を希望するのか。

こうしたことを、家族と話し合ってみてはいかがでしょうか。

任意後見契約をすぐに結ぶ必要はありません。

まず制度を知ること。そして自分の希望を整理すること。

それが第一歩だと思います。

おわりに――成年後見制度は「備えるための制度」でもある

今回の講習会に参加して、私は改めて考えました。

成年後見制度は、判断能力が低下した人を守るためだけのものではありません。

将来に備え、自分らしい暮らしを続けるためにも活用できる制度です。

そして、その中心的な選択肢の一つが任意後見制度だと私は考えています。

「認知症になってから考える」のではなく、「元気なうちに考える」。

高齢者向けの講習会でも、この考え方をもっと広く伝えていただきたい。

それが、72歳の私が今回の講習会で感じた率直な思いです。


※この記事は2026年10月時点の成年後見制度をもとにした個人の体験と意見です。契約の際は公証役場、家庭裁判所、社会福祉協議会、法律専門家などにご確認ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です