今日のニュース 深堀り 病院を変えてもカルテがつながる時代へ?

70代が知っておきたい「医療DX」

2026年9月8日

「いつもの病院ではない病院に行ったら、また最初から病歴を説明しなければならなかった」

「今飲んでいる薬の名前を聞かれたけれど、全部は覚えていなかった」

「以前受けた検査の結果を、新しい病院に持って行くのを忘れた」

こんな経験はありませんか。

70代になると、

内科
整形外科
眼科
歯科
泌尿器科
循環器科

など、複数の医療機関に通う人も珍しくありません。

しかし現在は、病院ごとにカルテが分かれていることが多く、

「A病院では分かっていることを、B病院では知らない」

ということが起こります。

国は今、この仕組みを大きく変えようとしています。

それが、

「医療DX」

です。

今回は、病院のカルテがつながると私たちの医療はどう変わるのか、70代の立場から考えてみます。


そもそも「医療DX」とは何?

DXとは、

デジタルトランスフォーメーション

の略です。

難しい言葉ですが、医療DXを簡単に言えば、

「医療に関する情報をデジタル化し、必要なときに適切に活用できるようにする」

取り組みです。

すでに私たちの身近なところでも、

・マイナ保険証
・オンライン資格確認
・電子処方箋
・マイナポータルでの医療情報確認

などが進められています。

そして、その先にある大きな仕組みの一つが、

「電子カルテ情報共有サービス」

です。


病院のカルテが「つながる」とは?

現在、多くの病院や診療所では電子カルテが使われています。

しかし、

電子カルテだから全国の病院で共有されている

というわけではありません。

ここは勘違いしやすいところです。

例えば、

松山のA病院で診察を受けた。

その後、旅行先の東京でB病院を受診した。

A病院とB病院が別々のシステムを使っていれば、B病院の医師がA病院のカルテを自由に見ることはできません。

そこで国が整備を進めているのが、

全国医療情報プラットフォーム

です。

その仕組みの一つとして、電子カルテ情報共有サービスが整備されています。


何の情報が共有されるの?

「カルテがつながる」と聞くと、

医師が書いたカルテの内容が全部、全国の病院から見られる

と思うかもしれません。

そうではありません。

現在の電子カルテ情報共有サービスでは、主に「3文書・6情報」と呼ばれる医療情報を扱います。

3つの文書

① 健診結果報告書

② 診療情報提供書(紹介状)

③ 退院時サマリー

そして重要なのが、

6つの医療情報

① 傷病名

② 薬剤アレルギー等

③ その他のアレルギー等

④ 感染症

⑤ 検査情報

⑥ 処方情報

などです。

つまり、

「カルテそのものを丸ごと全国で共有する」

というより、

診療に特に重要な情報を医療機関同士で共有できるようにする

と考えた方が分かりやすいでしょう。


70代にとって一番のメリット

「飲んでいる薬が分からない」を減らせる

高齢になるほど薬の種類が増えることがあります。

例えば、

内科でもらった薬。

整形外科でもらった薬。

眼科でもらった薬。

別の病院でもらった薬。

さらに市販薬を飲んでいる場合もあります。

新しい病院で、

「現在飲んでいる薬は何ですか?」

と聞かれても、

薬の名前を全部正確に答えるのは難しい

という人もいるでしょう。

医療情報の共有が進めば、処方に関する情報を確認しやすくなります。

これは単に便利になるだけではありません。

薬の重複や好ましくない飲み合わせなどを確認するうえでも役立つ可能性があります。


アレルギー情報も重要

さらに重要なのが、

薬剤アレルギー

です。

例えば過去にある薬を飲んで、

発疹が出た。

呼吸が苦しくなった。

重いアレルギー反応が起きた。

こうした情報は、次の医療機関でも非常に重要です。

本人が覚えていなかったり、緊急時に説明できなかったりすることもあります。

医療情報を適切に共有できれば、より安全な診療につながることが期待されます。


検査結果も共有できるようになる

高齢になると、

血液検査
画像検査
生活習慣病に関する検査

などを受ける機会も増えます。

例えば、

A病院で最近検査を受けたのに、

B病院でも同じような検査を受ける。

そんなことが起こる場合があります。

検査情報の共有が進めば、医師が過去の情報を参考にできるようになり、

診療をより効率的に行える可能性があります。

ただし、すべての検査結果が必ず共有されるという意味ではありません。


紹介状も電子化へ

これまで病院を紹介されると、

封筒に入った紹介状を渡され、

「これを次の病院へ持って行ってください」

と言われることがありました。

電子カルテ情報共有サービスでは、

診療情報提供書、いわゆる紹介状を電子的に医療機関同士で送受信する

仕組みが用意されています。

退院時の治療内容などをまとめた「退院時サマリー」も重要な情報です。

病院から病院へ。

病院から地域の診療所へ。

こうした情報連携が進めば、

「紙を患者自身が運ぶ医療」から「医療情報そのものがつながる医療」

へ変わっていく可能性があります。


旅行先で病気になったときにも役立つ?

これは70代にとって注目したいところです。

国内旅行中に突然体調が悪くなった。

救急車で知らない病院へ運ばれた。

しかし、

「普段どんな薬を飲んでいるか」

「どんな病気で治療しているか」

「薬のアレルギーはあるか」

をうまく説明できない。

こういう場面は十分考えられます。

全国規模で医療情報を確認できる仕組みが整えば、旅行先など普段とは違う医療機関を受診した場合にも役立つ可能性があります。

特に高齢者にとっては、

「自分で説明できないときに医療情報がある」

ということが大きな安心材料になるでしょう。


マイナポータルで自分自身も確認

電子カルテ情報共有サービスは、医師だけのためのものではありません。

患者本人も、対象となる情報をマイナポータルで確認できる仕組みが進められています。

例えば、

健診結果
傷病名
アレルギー情報
一部の検査情報
処方情報

などです。

これまで、

「自分の医療情報なのに、自分ではよく分からない」

ということもありました。

今後は、

自分の健康情報を自分でも確認する

という時代になっていくのでしょう。


では、個人情報は大丈夫なの?

ここが一番心配な人もいるでしょう。

病歴。

薬。

検査結果。

アレルギー。

こうした情報は非常に重要な個人情報です。

「全国で共有するなら、誰でも見られるのでは?」

と不安になるのは当然です。

しかし、医療機関が登録した情報を、別の医療機関が閲覧する際には原則として患者本人の同意が必要となる仕組みです。

また、電子カルテ情報共有サービスに登録された情報については、目的外利用を禁止するルールも設けられています。

つまり、

「全国の病院の職員が自由に私の病歴を見ることができる」

という仕組みではありません。


それでもサイバー攻撃は心配

医療DXには便利な面だけでなく、課題もあります。

その代表が、

サイバーセキュリティ

です。

病院がサイバー攻撃を受け、診療システムが停止する問題は実際に起きています。

医療情報がデジタル化されればされるほど、

「便利さ」と「情報を守る安全性」

の両方が重要になります。

厚生労働省でも医療情報システムの安全管理やサイバーセキュリティ対策について検討を続けています。

私たち患者側も、

「デジタル化=何でも安全」

と考えるのではなく、どのように個人情報が守られるのかを見ていく必要があります。


今すぐ全国すべての病院で使えるわけではない

ここは非常に重要です。

電子カルテ情報共有サービスは整備・導入が進められていますが、

現在、全国すべての病院・診療所で同じように利用できるわけではありません。

医療機関側に対応する電子カルテシステムなどが必要だからです。

つまり現時点では、

「もうお薬手帳はいらない」

「検査結果を持って行かなくていい」

「病歴を説明しなくても全部病院が分かっている」

と考えるのは早すぎます。


だから、お薬手帳はまだ捨てない

医療DXが進んでも、当面は

お薬手帳

を持っておくことをおすすめします。

特に高齢者の場合、

・普段飲んでいる薬
・薬のアレルギー
・持病
・かかりつけ医

などを自分でも把握しておくことが大切です。

スマートフォンが使えなくなった。

システム障害が起きた。

旅行先の医療機関がまだ対応していない。

そんな場合でも、紙のお薬手帳が役に立つことがあります。

デジタルと紙を上手に併用する。

今の段階では、それが現実的だと思います。


70代が今からやっておきたい5つのこと

① マイナ保険証の使い方を知っておく

病院の受付で慌てないよう、一度使い方を確認しておきましょう。

② マイナポータルを一度開いてみる

自分の医療・薬剤・健診などに関する情報を確認できるものがあります。

③ お薬手帳は引き続き持つ

医療DXへの移行途中では特に重要です。

④ 自分の持病と薬を把握する

デジタル化されても、自分の健康状態を知っておくことは大切です。

⑤ かかりつけ医を持つ

情報がデジタルでつながっても、

自分の健康状態を継続して見てくれる医師

の役割はなくなりません。


2026年9月、医療DXはさらに次の段階へ

厚生労働省では、2026年9月10日にも、

電子カルテ情報共有サービス

について検討する会議が予定されています。

同時に歯科医療のDXなどについても議論されます。

つまり医療DXは、

「いつか将来始まる話」

ではありません。

今まさに制度とシステムの整備が進んでいる途中

なのです。


まとめ

「診察券を何枚も持つ医療」から「情報がつながる医療」へ

70代になると、

病院に行く機会が増える。

薬が増える。

検査が増える。

そして複数の診療科にかかる。

だからこそ、

医療情報が適切につながることの恩恵を受けやすい世代

とも言えるでしょう。

病院を変わるたびに、

「以前の病気は……」

「飲んでいる薬は……」

「前回の検査では……」

と一から説明する。

そんな医療から、

必要な医療情報を、患者の同意のもとで医療機関が共有できる医療へ。

これは大きな変化です。

一方で、

個人情報は守られるのか。

サイバー攻撃は大丈夫なのか。

高齢者がデジタル化についていけるのか。

すべての医療機関が対応できるのか。

という課題もあります。

大切なのは、

「デジタルだから良い」「デジタルだから怖い」と決めつけないこと。

便利になる部分を利用しながら、お薬手帳や自分自身の健康管理も続ける。

そして、

「自分の医療情報は、自分でも知っておく」

という意識を持つ。

これからの70代にとって、それが医療DXと上手につき合う第一歩ではないでしょうか。

※ 厚生労働省によると、電子カルテ情報共有サービスでは、紹介状や健診結果などの文書に加え、傷病名、薬剤アレルギー等、その他のアレルギー等、感染症、検査、処方という6情報を扱います。別の医療機関が登録情報を閲覧する際には患者の同意が必要とされています。

厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」を公式参考資料にするのが分かりやすいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です