第5回 失敗から立ち上がる技術者たち――H3ロケット再挑戦の物語
種子島へ向かう前に知っておきたいこと
私は今回、H3ロケットの打ち上げを見るため種子島へ向かう。
多くの人は、
「ロケット打ち上げは成功するか失敗するか」
という結果だけを見る。
しかし私が見たいのは、その結果ではない。
その裏で働く技術者たちの姿である。
ロケット開発は失敗との戦いだ。
そしてH3ロケットは、まさに失敗から立ち上がったロケットなのである。
2023年3月7日 H3初号機の失敗
H3ロケット初号機は2023年3月7日、種子島宇宙センターから打ち上げられた。
日本の次世代主力ロケットとして大きな期待を集めていた。
打ち上げ直後、第1段は順調に飛行した。
しかし問題は第2段だった。
予定されていた第2段エンジンが点火しなかったのである。
そのままでは目標軌道へ到達できない。
JAXAは苦渋の決断として破壊指令を送った。
搭載されていた地球観測衛星「だいち3号」も失われた。
全国ニュースでこの映像を見た方も多いと思う。
私もテレビを見ながら、
「日本の宇宙開発は大丈夫なのだろうか」
と感じたことを覚えている。
技術者たちの苦悩
しかし宇宙開発は失敗して終わりではない。
むしろ失敗してからが本当の仕事である。
JAXAと三菱重工業の技術者たちは膨大な飛行データを解析した。
なぜ第2段エンジンが点火しなかったのか。
電気系統なのか。
制御装置なのか。
回路設計なのか。
原因を一つ一つ調べていった。
私も銀行員時代、システムトラブルや事務ミスへの対応を経験したことがある。
しかし宇宙開発は桁が違う。
一つの判断が何百億円ものプロジェクトに影響する。
技術者たちのプレッシャーは想像を超えるものだったと思う。
2024年2月17日 屈辱からの復活
そして約1年後。
2024年2月17日。
H3ロケット2号機が打ち上げられた。
全国の宇宙関係者が見守る中、
ロケットは順調に飛行した。
問題となった第2段エンジンも正常に作動。
衛星投入にも成功した。
その瞬間、管制室には大きな拍手が起こったという。
私はこのニュースを見ながら、
「日本の技術者はやはりすごい」
と思った。
失敗しても諦めない。
原因を究明し、改善し、再び挑戦する。
それこそが日本のものづくりの原点なのかもしれない。
次の動画は、是非ご覧ください。
技術者の苦悩、挫折と挑戦の日々を感じ取ることが出来ます。
しかし試練は終わらなかった
ところが2025年12月。
H3ロケットは再び試練を迎える。
日本版GPSである「みちびき5号機」の打ち上げである。
みちびきは、
- カーナビ
- スマートフォン
- 自動運転
- 防衛システム
などに欠かせない重要な衛星だ。
しかし打ち上げ後、第2段エンジンの再着火に問題が発生した。
その結果、衛星を予定軌道へ投入できなかった。
せっかく信頼を取り戻しつつあったH3だったが、再び原因究明が必要となった。
宇宙開発の難しさを改めて感じさせる出来事だった。
2026年6月10日のミッション
そして今回。
2026年6月10日。
H3ロケット6号機が打ち上げられる予定である。
今回のミッションは単なる衛星打ち上げではない。
最大の目的は、
「H3-30形態」
という新しい低コスト型ロケットの実証である。
今回のH3は、
- 主エンジン3基
- 固体ロケットブースターなし
という構成になっている。
つまり、
「より安く、より効率的に宇宙へ行く」
ための挑戦なのである。
なぜ今回が重要なのか
日本のロケットは性能は高い。
しかし打ち上げコストが高いと言われてきた。
一方でアメリカのSpaceXは、
低コスト化を進め、
世界の宇宙ビジネスを大きく変えた。
日本も今後、
- 月探査
- 火星探査
- 防衛衛星
- 通信衛星
を継続的に打ち上げるためには、
コストを下げなければならない。
その第一歩が今回のH3-30なのである。
今回の主役はロケットそのもの
今回は小型副衛星も6基搭載される。
しかし本当の主役は衛星ではない。
H3ロケットそのものである。
技術者たちが積み重ねてきた改善。
失敗から学んだ教訓。
そして未来への挑戦。
その全てがこの1本のロケットに込められている。
私が種子島で見たいもの
私は今回、種子島へ行く。
ロケットの轟音を聞きたい。
発射の瞬間を見たい。
もちろんそれもある。
しかし本当に見たいのは、
失敗しても立ち上がる人間の姿である。
2023年の失敗。
2024年の復活。
2025年の再びの試練。
そして2026年の挑戦。
私はその歴史の続きを、この目で見届けたいと思っている。
